[FP] 継続学習(相続・事業承継設計)

相続・事業承継設計

非上場株式等の納税猶予制度を中心とする事業承継税制

  • 納税猶予制度

納税猶予制度は、経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式をその会社の後継者となる親族が先代経営者から相続もしくは遺贈または贈与により取得した場合に、その後継者が事業を継続することを前提として一定額の相続税贈与税の納税を猶予するという制度である。さらに、一定の事由が生じた場合にはその猶予税額が免除される。

この制度の適用を受けるにためには、相続発生前(先代経営者が60歳未満で死亡した場合を除く)または贈与前に計画的な事業承継の取り組みが行われていることについて経済産業大臣の確認を、そして相続発生後または贈与後には経済産業大臣の認定を受ける必要があり、適用対象となる会社、先代経営者(被相続人または贈与者)、後継者(相続人等または受贈者)について各種要件を満たすことが必要となる。

  • 納税猶予制度のメリットとデメリット

相続税の納税猶予の利用により、先代経営者の相続が発生した際に、後継者が取得した株式(発行済完全議決権株式総数の3分の2が限度)の80%に対応する相続税の納税が猶予される。しかし、適用要件のハードルの高さや手続きの煩雑さ等から、利用に否定的な専門家も多い制度である。

贈与税の納税猶予の利用により、先代経営者の存命中に自社の株式(発行済株式総数の3分の2が限度)を後継者にまとめて贈与することができる。また、贈与者の死亡時には猶予された贈与税が免除され新たに相続税が課税されることになるが、課税対象となる株式の評価額は贈与時の価額であるため、贈与後に株価が上昇した場合はその分の税額が軽減されることになる。

デメリットとしては、納税猶予が確定した場合、贈与後に株価が下落した場合などが考えられる。

  • 相続時精算課税制度

納税猶予制度の適用要件を満たすことが難しく、納税猶予期限の確定事由に該当してしまう可能性が高い場合などは、納税猶予制度を使わない事業承継制度も検討する必要がある。

自社の株価が下がったタイミングに多くの株式を後継者に渡しておくことが基本となるが、先代経営者が65歳以上で、後継者(先代経営者の推定相続人)20歳以上(いずれも贈与年の1月1日現在の年齢)であれば、相続時精算課税制度が利用できる。特別控除額(2500万円)は非上場株式の贈与を考えると少額だが、贈与者の死亡の際の相続税額の計算において贈与時の株価で相続財産に加算されるため、贈与後に株価の上昇が予想される場合には税額が軽減できることになる。また、贈与税の納税猶予の対象となる株式数(発行済株式総数の3分の2)を超える部分の株式の贈与について、相続時精算課税制度を併用して贈与することも可能である。