継続教育(2月分)(その3)
ライフプランニング・リタイアメントプランニング
育児休業等についての実務上の注意点- 育児休業制度の概要
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下、「育児・介護休業法」)により、1歳未満の子を養育する労働者は事業主に申し出て育児休業することができる。
また、育児休業をしない労働者や1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者は、育児休業をしない労働者は、育児休業に準ずる措置もしくは勤務時間の短縮等、仕事をしながら子の養育を用意にする措置(以下、「勤務時間短縮の措置等*1」を受けられる。
満3歳未満の子を養育するための育児休業および育児休業に準ずる休業(以下、「育児休業等」)の期間については、健康保険・介護保険・厚生年金保険(以下、「社会保険料」)は、被保険者分・事業主分ともに、事業主の申し出により免除される。さらに将来の年金額の計算においては、免除期間中の分も年金額計算の基礎に参入されるため、将来の年金額が減る心配は無用である。
なお、労働基準法の産前産後休業期間は育児休業等には当たらないので、同期間中の社会保険料は事業主も被保険者も負担しなければならない。
保険料免除の申し出は、事業主が保険者(事業所の所在地を管轄する年金事務所*2、所属する健康保険組合や厚生年金基金)に「健康保険育児休業等取得者申出書」を提出して行う。保険料を徴収されない期間は、育児休業等を開始した日の属する月から終了予定日の翌日の属する月の前月までとなる。予定日前に終了した場合は、「育児休業等取得者終了届」を提出する。
育児休業等の申し出は、申し出に係る休業をしている間に行わなければならず、事後に申し出を行っても保険料は免除されない。
- 育児休業等終了後の標準報酬月額の改定
- 基本
育児休業等終了後の社会保険料の額は、従前の標準報酬に基づいて算定される。
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- 例外
育児休業等終了日に3歳未満の子を養育している被保険者については、育児休業等に受ける報酬に変動があった場合、通常の随時改定に該当しなくても被保険者からの申し出に基づき、事業主が所轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することにより、標準報酬月額の改定を行うことができる。
固定的賃金の変動がなくても、育児休業等が終了した月(終了日が月末であれば終了月の翌月)以後3ヶ月間の標準月額の平均に対応する標準報酬月額が、従前の標準報酬月額から1等級以上の差があれば改定が可能である。なお、この改定で決められた標準報酬月額は、改定が1〜6月に行われた場合はその年の8月まで、7〜12月に行われた場合は翌年の8月まで適用される。
- 標準報酬月額の改定による年金額の低下の防止
3歳未満の子を養育する被保険者または被保険者であった人で、養育期間中の各月の標準報酬月額が養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合、給与等が下がらなかったものとして従前の標準報酬月額にて年金額を計算する特例措置が設けられている。
手続きには、被保険者が事業主経由で「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」などの書類を所轄の年金事務所に提出する必要がある(すでに離職している場合は、直接年金事務所に提出)。なお、離職していて、養育開始日の属する月の前月に厚生年金保険の被保険者でなかった場合は、その前月前1年以内の被保険者であった直近の月における標準報酬月額が養育前の標準報酬月額とみなされる。1年以内に被保険者期間がない人は適用対象外である。
通常、この特例は実際に養育を開始した日の属する月から適用される。ただし、
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- 3歳未満の子を養育する者が新たに被保険者資格を取得したときは、その資格取得日、
- 保険料の納付を免除されていた育児休業終了日の翌日が属する月の初日、
- 他の子にこの特例措置を適用しそれが終了したときは、その最終月の翌日の初日、
がそれぞれ養育開始日とみなされる。
一方、この特例措置の適用が終了するのは、
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- 子が3歳に到達または死亡したとき、
- 子を養育しなくなったとき、
- 離職したとき、
- 保険料免除の適用を受ける育児休業等を開始したとき
- 当該子以外の子で特例を開始したとき
である。
なお、この特例措置は、申し出より2年前までであれば遡及適用される。