給与明細は謎だらけ

羊たちの沈黙

給与明細は謎だらけ (光文社新書)
三木義一
光文社
売り上げランキング: 56990
おすすめ度の平均: 3.5
3 好著だが、”羊たち”の連呼が不快。
5 所得税の徴収から垣間見える徴税機関日本国政府の強かな絞りとり政策
4 給与明細を自分で再計算する方法
1 タイトルと内容のギャプにご用心!
1 初学者向けではない。

給与明細は普段手取り額のところしか見ないけど、やはりこういう本を読むと多少は注意してみようかという気にはなる。
確かにこの本にあるように納税を会社任せにすることでサラリーマンから税に対する意識を持たせないようにするという策略はある程度うまくいっているとは思う。
個人的にはここ数年確定申告をするようにして自ら税に対する意識は高めようとはしているがやはり勉強が不足しているかな。

この本で興味深かったのは、他の先進国との比較もしてあったこと。給与所得の控除についても

国際比較をしても日本の控除額はかなり高く、外国には給与所得控除のような制そのものがないか、あっても非常に低額である。
欧米の場合はサラリーマンも実際の経費を引くのが原則だからである。(p97)

として、財務省のホームページの資料を記載している。

また、消費税が派遣労働を促進してきた意外な理由についても解説しており、

理由は単純である。正社員の給与は、それを支払っても会社の消費税負担は軽くならないが、人材派遣会社への支払いはその消費税負担が軽くなるからである。
消費税は事業者の売上に5%の税率で課税されるが、事業者が仕入れに際して負担した消費税分(仕入額の5%)は税額が減る。この場合、正社員の給与支払いは仕入ではないので、
いくら正社員に給与を支払っても消費税には影響がない。これに対して、派遣会社に支払う派遣料は仕入となり、その分消費税は安くなる。
したがって、正社員を雇用するよりも派遣会社を利用した方が、会社の消費税負担は軽くなるのである。
それどころか、消費税負担を回避するために派遣会社が派遣会社を使うという次のような手口まで考案されてきた。(p197)

として、内閣府税制調査会の資料(p45(資料内ではp40))を記載している。

年末調整の対応等定番の話題から、上記のようなへーと思わせるような話題までなかなかタメになる本だと思われる。