継続教育(1月分)(その2)
リスクと保険
2010年4月1日から保険法が施行される予定である。保険法の目的の1つは、保険契約者や被保険者を保護するための規定の整備である。
- 全種目共通の改正項目
- 告知義務(片面的強行規定)*1
「契約者または被保険者になる者(以下、保険契約者等)が契約締結の際に保険会社から告知を求められた、危険に関する「重要な事項」に答える義務(質問応答義務)として定められた。また、告知しなかった事実と事故との発生に因果関係がない場合、保険会社は保険金を支払う必要があるという「因果関係不存在の特則」が片面的強行規定となった。 - 通知義務(片面的強行規定)
通知事項に変更がある場合、「遅滞なく」通知すればよいことになった。通知義務違反においても「因果関係不存在の特則」が片面的強行規定として適用される。 - 保険金支払い期限(片面的強行規定)
保険金の支払い期限が新設された。期限を明確にすることで、適性な保険金の支払いに不可欠な調査に要する時間的猶予を保険会社に与える一方で、調査期間の経過後には、保険会社に遅滞の責任負わせる。 - 重大事由による解除(片面的強行規定)
保険契約の解除には「重大事由による解除」が一つに挙げられる。- 保険契約者等が故意に損害を生じさせ、または生じさせようとしたこと。
- 被保険者が保険金請求について詐欺を行い、または行なおうとしたこと。
- そのほか、保険会社の保険契約者等に対する信頼を損ない、損害保険契約の存続を困難とする重大な事由があること。
- 保険料の返還(片面的強行規定)
原則的に、無効や取り消しがあったときから保険終期日まですでに支払った保険料が返還されることになる。但し以下の場合を除く。- 保険契約者等の詐欺または強迫を理由として、保険会社が保険契約を取り消した。
- 遡及保険において、保険契約者等に悪意があり無効とされた(但し保険会社が保険事故の発生を知っていて契約の申し込みまたはその承諾をした場合を除く)。
- 重複保険
各保険会社は契約の前後に関係なく自己の契約に基づき填補すべき損害額について全額支払義務がある。被保険者はどの保険会社にも保険金額の支払いを請求できるが、支払い保険の合計額が損害額を超えた部分の支払いは受けられない。 - 消滅事項
保険金請求等にかかわる消滅時効は3年
- 告知義務(片面的強行規定)*1
- 物保険の改正項目
- 人保険の改正項目
- 被保険者の同意
傷害疾病定額保険契約*2で契約者以外を被保険者とする場合は、被保険者の同意がなければ契約の効力を生じない。ただし被保険者が保険金受取人の場合はこの限りでない。しかし被保険者=受取人であっても、給付事由が傷害疾病による死亡保険金のみの契約なら、やはり被保険者の同意が必要である。 - 被保険者による解除請求
傷害疾病損害保険契約*3については、別段の合意がある場合を除き、被保険者は保険契約者に対して契約の解除を求めることができる。一方、傷害疾病定額保険契約については、次のいずれかの場合に解除を求めることができる。- 傷害疾病定額保険契約で被保険者の同意を取り付けていない場合(被保険者=保険金受取人の場合を除く)
- 保険給付を目的として事故を発生させようとしたり、詐欺行為をしたり、その他被保険者の信頼を損ない、契約の存続を困難にする重大な事由がある場合
- 保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了(離婚など)その他により契約時から事情が著しく変更となった場合
- 遺言による保険金受取人の変更
遺言により保険金受取人の変更ができるようになった。但し相続人は保険会社に保険金受取人の変更の通知をしなくては保険会社に対抗できない。
- 被保険者の同意
- 賠償責任保険の改正項目
保険契約 | 保険金受取人 | 支払保険金の内容 | 被保険者の同意 |
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保険契約者と被保険者が異なる 傷害疾病定額保険契約 | 被保険者またはその法定相続人 | 死亡保険金のみ | 必要 |
死亡保険金を除く保険金 | 不要 | ||
上記以外の者 | 問わず | 必要 |