継続教育(1月分)(その1)

金融資産運用設計

個人向け社債の人気とリスク

2008年以降、企業が個人向けに発行する社債が急増している。

社債の格付け
社債の格付けについてだが、格付けがトリプルB以上の社債は投資適格債とされているが、2008年の金融危機を境にシングルAと投資適格ギリギリのトリプルBとのスプレッドには大きく開きが生じている。

社債管理者
会社法では、社債を発行する企業に対し原則として社債管理者の設置を義務付けている。社債管理者には、社債権者(社債の所有者)のために弁済を受ける等の業務を行うのに必要な一切の権限がある。社債管理者になることができるのは、銀行、信託銀行、担保付社債信託法による免許を受けた会社に限られていて、証券会社は社債管理者になることができない。
社債引受人
社債を発行する際の引受人になることができるのは証券会社等に限られ、銀行等金融機関が社債引受人になることができない。

個人向け社債の価格
日本証券業協会では個人向け社債等の店頭気配情報発表制度を設け、「発行額100億円以上」「固定利付かつ満期一括償還」などの基準を満たす銘柄の中から個人向け社債等の店頭気配銘柄を選定し、一覧表にして毎営業日発表している。なお、店頭気配とは売買の目安となる買い気配売り気配の仲値である。

期限前償還条項付劣後債
発行者が任意で満期前に償還することができるという期限前条項の付いた劣後債*1

個人向け国際は最低購入単位が1万円で、発行から一定期間経過後は中途換金しても国が元本で買い取るなど手軽に投資できるのに対し、個人向け社債を中途換金する場合は、市場価格で売却するため価格変動リスクや流動リスクにさらされることに注意が必要。

不動産運用設計

最近の地価動向と不動産市況について

平成21年度7月1日時点の都道府県地価調査(基準地価)の結果は、全国平均で住宅地4.0%の下落、商業地5.9%の下落となった。

東京圏の地価動向
住宅地では平均6.5%の下落で、ほぼすべての地点で下落となった。特に、都心部の落ち込みが目立つ。但し、単純に前回の調査との比較では、大幅な下落ということにはなるが、ここ数年で急激に大幅な上昇となっていたことの反動ともとれる。

その他の地域の地価動向
大阪圏の住宅地では、平均で4.5%の下落となり、前回の1.0%上昇から下落に転じ、すべての地点で下落となった。

全国の建設費の動向
建設資材価格は平成20年以降の急騰以降、同年の夏頃をピークに下落に転じ、現在はその急騰前の価格に戻り、落ち着きを取り戻す。

首都圏の新築分譲マンション市場
平成21年上期の首都圏における新築分譲マンション価格は、一戸当り価格(4481万円)、平方米単価(63.1万円)と、前年同期比においてはアップしている。但し下期の供給量は落ち込むことが予想されている。

首都圏の新築建売住宅市場
平成21年上期の一戸当り平均価格は、4517.9万円であった。前年同期比では、116.3万円(2.5%)の下落。総額を抑えるための「小型化」の傾向が見受けられる。

首都圏の中古住宅市場
首都圏の中古マンション成約件数は、平成21年9月まで7ヶ月連続で前年を上回っている(前年同月比6.9%増)。中古戸建て住宅の成約件数も平成21年9月時点で6ヶ月連続して前年を上回っている(前年同月比9.8%増)。

不動産市況は好材料もあるものの、景気動向に左右されそう。

ライフプランニング・リタイアメントプランニング

高額療養費制度のポイントと注意点

高額療養費制度を正しく理解する必要がある。

高額療養費制度とは
健康保険、国民健康保険などの公的な医療保険制度では、病気やけがなどで入院や通院した場合、被保険者(本人)および被扶養者(家族)は保険診療にかかった費用の3割(小学校就学前は2割、70歳以上は原則1割)を自己負担する。その際、自己負担額があり、自己負担額から自己負担額を差し引いた金額が高額療養費として給付される(払い戻される。)
    • 70歳未満
所得区分自己負担限度額(月額)
原則多数該当*2
上位所得者*3150,000円+(総医療費-500,000円)X1%83,400円
一般所得者*480,100円+(総医療費-267,000円)X1%44,400円
低所得者*535,400円24,600円
所得区分自己負担限度額(月額)
世帯単位(入院・通院)個人単位(通院)多数該当
現役並み所得者*680,100円+(総医療費-267,000円)X1%44,400円44,400円
一般所得者*744,400円12,000円-
低所得者2*824,600円8,000円-
低所得者1*915,000円8,000円-

高額療養費制度適用上のポイントと注意点
制度適用上の注意点
    • 同一月内
      • 「1ヶ月」とは同じ月の1日から末日までを指し、2つ以上の月にまたがる場合は分割して計算する。
    • 医療機関ごと
      • 複数の医療機関で診療を受けた場合は、それぞれ別々に計算する。
    • 診療科ごと
      • 同じ医療機関でも複数の診療科で診療を受けた場合は、それぞれ別々に計算する。
    • 入院と通院の区別
      • 同じ医療機関・診療科でも、入院と通院は別々に計算する。
    • 世帯合算
      • 同一世帯で同じ月に2万1000円以上(70歳以上の場合は金額は問わない)の自己負担額の支払いが2件以上ある場合は、合算して自己負担額を超えた分が払い戻される。また、同じ患者が同じ月に2つ以上の医療機関を受信して、それぞれ2万1000円以上の自己負担額を支払った場合でも、合算して自己負担額を超えた分が払い戻される。
    • 保険適用外費用は対象外
      • 入院時の食事代や差額ベッド代など、健康保険が適用されない費用は、高額療養費の対象とはならない。ただし、これは税金上の医療費控除の対象にはなる。医療費控除を受けるための確定申告を行う際には、かかった医療費から、払い戻しを受けた高額療養費を差し引いて申告する。なお、当年末までに支払った医療費分について、高額療養費の払い戻し額が翌年の申告期限までに確定しなかい場合、いったん差し引かずに申告したうえで、後日払い戻しを受けた時点で修正申告することも可能。

高額療養費の申請方法
事後申請と事前申請の2通りがある。
    • 事後申請
      • 医療機関の窓口で医療費(自己負担額)を全額支払い、後日、保険者(協会けんぽ健康保険組合、共済組合、国民健康保険等)に高額療養費支給申請を提出することにより、自己負担限度額を超えた分が払い戻される。払い戻しは、医療機関から提出される診療報酬明細書(レセプト)かの審査を経て行われるので、診療月から3〜4ヶ月程度かかる。一部の健康保険組合ではレセプトで自動計算して支給するシステムととっているので、申請する必要がない場合がある。支給申請についての時効は、診療を受けた月の翌月1日から起算して2年間である。
    • 事前申請
      • 70歳未満の方が入院する場合、加入する保険者に事前に申請し交付された「限度額適用認定証」を、入院時に健康保険被保険者証とともに医療機関に提示することにより、窓口での支払いが自己負担限度額までとなる。この場合、自己負担限度額を超える部分の費用は医療行為として現物給付される。なお、70歳以上の方(後期高齢者医療制度の適用対象者は除く)は、すでに高額療養費の現物給付化の制度が導入されているので、事前の申請手続きの必要はなく、医療機関の窓口では自己負担限度額までを支払うことになる。

医療保障の見直し相談において、民間の医療保障を検討する際には、まずは公的な医療保険制度でどこまでカバーされているのかを把握することが重要。

*1:一般の債権者よりも弁済順位が劣る債券であり、「破産手続開始」や「会社更生手続開始」などのデフォルト(債務不履行)事由が発生した場合には、他の債権者への返済を終えた後でなければ元利金の返済が行われない。

*2:高額療養費の申請月以前の直近1年間に、3回以上高度療養費の支給を受けている場合、4回目からは多数該当となり自己負担額が軽減される。

*3:国保加入者は基礎控除後の所得金額が600万円超。健保加入者は標準報酬月額53万円以上

*4:上位所得者、低所得者以外の者。

*5:住民税非課税世帯や生活保護世帯等。

*6:標準報酬月額28万円以上で、かつ年収が単身世帯の場合383万円以上、夫婦世帯の場合520万円以上の者

*7:現役並み所得者、低所得者以外の者。

*8:世帯員全員が住民税非課税者。

*9:世帯員全員が低所得者2に属し、かつその世帯所得が一定基準以下。