[FP] 継続学習(リスクと保険)

リスクと保険

がんとがん保険


1981年以降、日本人の死因のトップはがんで、2008年には死亡者数全体の30%を占める(厚生労働省「平成20年人口動態統計」より)。

  • 「がん」という病気


日本人が生涯がんに罹患する確立は、男性53%、女性41%で、2人に1人はがんにかかる可能性があることがわかっている。また、死因のトップではあるが、1993年〜96年にがんと診断された人の5年相対生存率は、男性49.2%、女性59.4%、部位別では、肝臓と肺は20%前後と低いものの、胃は60%前後、大腸、直腸、結腸は60〜70%、子宮は70%以上、乳房は80%以上を示しており、がんは決して治らない病気ではなくなった*1

  • がんと先進医療


がんが不治の病でなくなったのは、医療の発展によるところが大きく、最先端の医療技術のなかには、がん治療に係るものが多く含まれている。この、最先端の医療技術のうち、厚生労働大臣がその種類および実施医療機関を定めたものを先進医療という。先進医療は公的医療保険が適用される保険診療ではないものの、保険診療との併用が認められている。


通常、保険診療では、患者はかかった医療費の一部を自己負担する。一方、保険が適用されない自由診療では、医療費全額が自己負担になる。また、自由診療保険診療の両方が混在した場合、混合診療が禁止の原則から、特定療養費の例外を除いて、保険診療部分を含めた医療費全般が自己負担になる。この特定療養費のなかに先進医療が含まれている。


平成22年8月1日現在、先進医療技術は116種類(薬事法未認定・適用外の第3項先進医療技術29種類も含む)、実施医療機関は延べ942である。前述のとおり、先進医療は保険診療との併用が認められているので、先進医療にかかる費用は全額自己負担になるものの、診察料や検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険の適用が受けられる。ただし、承認された医療機関以外で先進医療と同様の治療や手術を受けても先進医療とはみなされず、すべてが公的医療保険の対象外となり診察料等を含め全額を自己負担しなければならない。なお、先進医療の種類や実施医療機関は変動している。


もしもに備え、がんに特化した保険に加入しておくのは、家計への負担を軽減するための1つの方法になるだろう。


がん保険に加入する際に保障内容だけでなく、保証期間や保険料払込期間にも気をつける必要がある。保障期間は終身のものが多いが、ある一定年齢に達したら保障内容の変わるものや、定期型や更新型で保険料が高くなっていくものもある。また、ほとんどのがん保険は責任開始期間から90日間は免責である。さらに、がんの治療には、経済的な負担だけでなく、医療面や精神面の負担も重い。これらをカバーするサービスを提供するがん保険もあり、選択する場合には十分考慮する必要がある。

*1:厚生労働省がん研究助成金「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成16年度報告書より

[FP] 継続学習(ライフプランニング・リタイアメントプラニング)

ライフプランニング・リタイアメントプラニング

年次有給休暇精度の基本と時間単位付与

平成22年4月、改正労働基準法が施行された。改正事項の目玉の1つが年次有給休暇の時間単位付与制度の創設がある。

年次有給休暇(以下、「年休」という)制度は、労働基準法が定める制度のなかでも、最も広く知られている制度の1つと言えるが、十分にその利用が促進されているとまではいえない状況である。この状況を受けて、政府は「労働時間等見直しガイドライン」を改正した(原則として平成22年4月1日適用)。

    • 原則として理由の如何にかかわらず取得が認められている。
    • 休暇取得日について、有給とすることが法律で義務づけられている。

年休は、最初の雇い入れ日から6ヶ月間継続勤務*1し、かつ、その6ヶ月間の出勤率が8割以上である労働者に対し、原則として10日付与される*2。継続勤務6ヶ月経過日が、その労働者の「基準日」となり*3、その後毎年基準日ごとに新たな年休が発生する。

年休取得日は、原則として労働者が自由に指定できる。しかし、労働者が年休請求による時季指定した日について、年休付与することが事業の正常な運営を妨げる場合においては、事業主はその時季を変更することができる。

  • 年休の時間単位付与

年休の「時間単位」の付与については、平成22年3月までは例外なく違法とされていた。しかし、平成22年4月の改正労働基準法施行により、一定の条件を満たすことで認められることになった。

実際に年休の時間単位付与を導入するためには、書面による労使協定の締結が必要である。労使協定で定めなければならない事項は、次のとおり。

    1. 時間単位付与の対象労働者の範囲
    2. 時間単位付与が可能な年休日数
    3. 時間単位付与の年休の1日分の時間数
    4. 1時間以外の時間を単位とする場合は、その時間数

  • 時間単位付与とその運用

年休を時間単位で活用できる場合であっても、あくまでも通常の年休と同様で、事前に請求することが原則である。

*1:「継続勤務」とは、労働契約の存続期間を言う。パートから正社員に変更された場合等は、前後の期間を通算する。期間の定めのある労働契約が更新された場合も前後の期間を通算する。

*2:全労働日の出勤率が8割未満となったときは、年休はまったく付与されない。

*3:全労働者に対して統一基準日を適用する場合も少なくない。

[FP] 継続学習(不動産運用設計)

不動産運用設計

不動産売却時の諸費用と手取り金額

  • 手取り金額の概算

不動産の売れる価格(売却価格)の目処がついている場合、不動産売却時の諸費用と税額、そしてその不動産に関する残債等がわかれば、手取り金額が概算できる。

手取り金額 = 売却価格 - (諸費用 + 税額 + 残債等)

売却価格の見込みがわからないときには、不動産仲介業者の「無料査定」を利用する方法もあるが、可能であれば、複数の業者から査定額を出してもらう方が無難。

  • 不動産売却時の諸費用
    • 仲介手数料

売却の際に不動産業者に仲介業務を依頼し、売買契約が成立した際に支払う報酬額。通常成約価格の3%程度。

不動産の売買契約書は課税文書であるため、印紙税法上、その作成者となる売主・買主が連帯して印紙税(国税)を負担する義務がある。

    • 登記費用

不動産を買主の名義に変更するため、売主として必要な登記があれば、その登記費用を負担する必要がある。

土地の売却時には、上記項目に加えて、「測量費用」「建物解体撤去費用(建物滅失登記費用も含む)」等が必要になることがある。

  • 不動産売却時の税金

不動産の課税所得の計算において譲渡益が発生すれば、原則として所得税・住民税の対象となる。

  • 手取り金額の概算時のポイント

計画を立てる段階では、評価の数字はわからないため、売却価格は低めに、諸費用については高めに設定するほうがよい。

また、不動産が共有である場合は、課税関係が複雑になるため注意する必要がある。

[FP] 継続学習(金融資産運用設計)

金融資産運用設計

単利商品の扱い方 -複利に換算-

  • 債券の利回り

最近は、日本国内が超低金利であるため、高利回りをキャッチとした外貨建て新発債券の取扱が増えている。

商品的には、先進国通貨建てでは「利付債」、新興国通貨建てでは「ディスカウント債(クーポンを低く抑えた割引債券)」が多く、「ゼロクーポン債(国外で発行される利払いのない割引債券)」の扱いは比較的少ない。
  ゼロクーポン債が少ない背景の1つとしては税金制度がある。ゼロクーポン債は額面よりも割り引いて発行されるため、償還時にはその差益が雑所得として総合課税の対象となり、中途売却時には通常、譲渡所得として総合課税の対象となる。しかし、ディスカウント債は、一定の条件を満たすことにより、クーポンには20%の源泉徴収税が適用され、中途売却時の譲渡益が非課税になる。

新発債券のように単利型で表示されている金融商品ポートフォリオに入ってくる場合は、そのまま加重平均してポートフォリオ全体の運用利回りを計算できない。そのため、単利型の商品をポートフォリオに組み入れる場合には、複利に換算する必要がある。

高利回りの商品であるほど、ポートフォリオ全体の運用利回りを求めるとき、単利のまま加重平均してしまうと大きな誤差になる。

[FP] 継続学習(相続・事業承継設計)

相続・事業承継設計

税制改正による相続対策への影響

  • 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し

被相続人等が事業や居住のために使用していた宅地等は相続人等にとっても生活基盤になるため、事業や居住の継続に影響がないように配慮する、というのがこの特例の本来の趣旨である。しかし、改正前は宅地を取得した相続人等が事業や居住を継続しなくても減額が受けられるなど、その趣旨から外れるものもあった。今回の改正で、適用要件がより厳格化され、本来の趣旨には近づいたが、減額割合が小さくなる(またはなくなる)ことで増税となるケースがある。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の改正内容

    1. 事業や居住を継続しない宅地等を50%減額の対象から除外
    2. 宅地の取得者ごとに適用対象となるかを判定
    3. 一棟の建物の敷地については利用部分ごとに按分して減額割合を計算
    4. 80%減額ができる居住用宅地等は一つに限定

  • 直系尊属から住宅取得資金等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の拡充

直系尊属(父母、祖父母など)から贈与により住宅取得等資金(住宅の取得・新築や増改築等に充てるもの)の贈与を受けた場合には、一定の要件を満たすことで500万円まで贈与税を非課税とする措置が設けられていた。今回の改正で、非課税とされる金額が平成22年中に贈与を受けた者については1,500万円まで、平成23年中に贈与を受けた者については1,000万円までにそれぞれ引き上げられ、非課税で贈与できる金額が増加した。

注意点としては、金持ち優遇にならないように、受贈者について2,000万円以下の所得制限があること(平成22年までは2,000万円超でも500万円まで非課税で贈与が受けられる)。贈与を行う前に受贈者の所得について調べておく必要がある。

なお、贈与者が父または母である場合には、相続時精算非課税制度(特別控除額2,500万円)との併用を選択することも可能であるが、この場合、相続時精算課税の特別控除に係る金額は、贈与者の相続時に相続財産に合算されることになる。また、暦年課税における基礎控除額110万円は適用できなくなる。

継続学習(タックスプランニング)

タックスプランニング

マイホームの増改築と所得税の税額控除

マイホームに一定の増改築やリフォーム(以下、増改築等)をした場合には、所得税の税額控除が認められる各種制度がある。

  • ローン型
    • 住宅リフォーム・ローン減税制度

住宅ローン等を利用してマイホームに一定の増改築等をし、平成21年1月1日から平成25年12月31日までに居住を開始した場合、「住宅借入金等特別控除」の適用が受けられる。

      • 適用要件

この制度の適用を受けるには、一定の要件をすべて満たす必要がある。 なお、対象工事となる一定の増改築等とは次のいずれかをいう。

    1. 戸建て住宅の増改築や大規模なリフォーム(修繕または模様替え)
    2. マンションの床、階段または壁の過半について行う一定のリフォーム
    3. 住宅の居室、台所、浴室、便所等の床または壁全部のリフォーム
    4. 一定のバリアフリー改修工事(後述のバリアフリー改修促進税制に該当するもの)
    5. 一定の省エネ改修工事(後述の省エネ改修促進税制に該当するもの

「借入金等の年末残高*1×控除率(1.0%)」を、居住開始年分以後の各年分の所得税額から控除できる(控除限度額あり)。借入金の年末残高限度額は平成22年までは5000万円だが、それ以降は毎年1000万円ずつ段階的に引き下げられている。そのため、年間控除限度額も累積控除限度額もそれぞれ10万円、100万円ずつ毎年下がっている。

住宅ローン等を利用して、自己が所有する居住用家屋に一定の要件をすべて満たすバリアフリー改修工事を含む増改築等をした場合に、「特定増改築等住宅借入金等特別控除」の適用が受けられる。なお、適用対象者は次のいずれかでなければならない。

    1. 50歳以上*2
    2. 要介護認定者(介護保険法上)
    3. 要支援認定者(介護保険法上)
    4. 障害者(所得税法上)
    5. 65歳以上の親族と同居*3している
    6. 上記のいずれかに該当する親族*4と同居している

また、対象となる工事は、高齢者等が自立した日常生活を営むために必要な工事をいう。

バリアフリー改修工事に充てた住宅借入金等の年末残高(200万円まで)×控除率(2.0%)」と「バリアフリー改修工事以外の増改築等の工事に充てた住宅借入金等の年末残高*5×控除率(1.0%)」との合計額を、居住開始年分以後の各年分の所得税額から控除できる。ただし、年間12万円、累積60万円を限度とする。

    • 省エネ改修促進税制
      • 適用要件

住宅ローン等を利用して自己が所有する居住用家屋に一定の省エネ改修工事を含む増改築等をした場合に「特定増改築等住宅借入金等特別控除」の適用が受けられる。
一定の省エネ改修工事とは、次の要件を満たすものをいう。

    1. 断熱改修工事
    2. 改修部位の省エネ性能が平成11年基準以上になる工事
    3. 改修後の住宅全体の省エネ性能が1段階以上上がると認められる工事(居住開始が平成21年4月1日から平成22年12月31日の間は免除)

バリアフリー改修工事の計算に準ずる(「バリアフリー改修工事」を「特定省エネ改修工事」に読み替え)

  • ローン・自己資金選択型

居住しているマイホームに一定のバリアフリーもしくは省エネ改修工事を行った場合、工事費用の調達方法にかかわらず、所得税の特別控除「住宅特定改修特別税額控除」の適用を受けることができる。

  • 制度の重複適用

基本的には、同じ種類の改修工事の場合はいずれかの選択になる。

*1:工事費用<住宅ローン等の年末残高」の場合は、工事費用の額

*2:居住開始年の年末時点

*3:居住開始年の年末時点

*4:居住開始年の年末時点

*5:バリアフリー改修工事相当分と合わせて1000万円分まで

[FP] 継続学習(リスクと保険)

リスクと保険

賃貸物件入居者向けの火災保険

賃貸物件の入居者向けの火災保険のポイントについて

  • 賃貸物件入居者用の火災保険の特徴

賃貸物件の入居者は建物以外の

    • 家財の損害保険金
    • 費用保険金
    • 賠償責任を中心とした損害保険金の補償

での組み立てとなる。他に必要に応じて地震保険を付加する。
  火災保険の内容で契約者がわかりにくいのが家財の評価額である。家財の評価方法は、

    • 実際に所有している家財の価額を積算する方法
    • 家財簡易評価表を使って評価額を算出することが多い。

この簡易評価法は各保険会社でまったく同じ金額になっているわけではない。

  • 賃貸物件入居者用の火災保険と賠償責任

入居者が失火して近隣に類焼した場合、民法第709条の規定の特別法として失火の責任に関する法律(以下、失火責任法)が適用となり、失火者に重大な過失がなければ損害賠償責任は問われない。しかし家主に対しては民法第415条の債務不履行責任が適用されて履行不能による損害賠償責任が発生する。
  これを担保するのが借家人賠償責任補償や個人賠償責任補償である。しかしこれらの賠償責任関係の補償は必ずしも示談交渉サービスが付帯されているわけではない。

  • 賃貸物件入居者用の火災保険の加入先

賃貸物件入居者向けの火災保険の加入先は損害保険会社や共済だけではない。少額短期保険業者も数多く参入している。
  賃貸物件入居者向けの火災保険の契約は、物件を仲介する不動産業者を通じての契約が多い。そのため加入先については不動産の仲介業者がどこの保険会社と取引があるかに左右される。そのためこうした点を踏まえて火災保険の契約先がどこになるのかを確認しておくこともポイントとなる。

  • 保険の対象とならない家財、地震保険の割引適用

家財を火災保険の保険目的とするときには、その対象とならないものがある。保険の対象になるかどうかというのは契約者に非常にわかりにくいところで、例えば通貨や預貯金証書やインテリアで置いている植物なども対象外である。

  • 賃貸物件入居者向けの火災保険の実務上の注意点

賃貸物件入居者向けの火災保険がセットプランになっていると、入居者が自分に必要な補償と必要でない補償を選択することができない。
  賃借人が保険期間の中途で引越しすると、契約内容の変更あるいは解約の事務手続きをするのが通常であるが、現契約を解約すれば多少なりとも解約返戻金がある。
  実際に対象となる被保険者の範囲や賠償事故の範囲も確認する。